Last Modified; May 05 2002
DBM 局発レベル S/N トータルゲイン AGC 妨害信号(1) 妨害信号(2) 感度
AGC(2) DUAL GATE ゲインコントロール ノイズブランカ(1) ノイズブランカ(2) BC帯
ダイオードを使用したDBMは、局発を充分注入すれば通常約6dB程度のLossと言われている。 私も長い間何の疑いもなく事実のみ受け入れていた。 しかしよく考えてみるとダブルバランスドミクサーの動作においては、信号と局発を混合した際に出てくるのは、和、差の両方の成分であり、 使うのはそのどちらか、すなわち半分(3dB)の電力を捨てている。 そう考えると6dBのうち約3dB程度がトランスやダイオードのスイッチングの損失による物である。これが各素子の損失合計の妥当な所と思う。 送信機においては、この逆側ヘテロダインの成分はスプリアスになって現れるから、忘れられることはあまりない。 受信機における動作を考えてみる。
この場合はイメージ周波数の受信となって現れる。イメージ比自体は高周波増幅の前、 フロントエンドでバンド毎のフィルターや、トラップその他で稼げばいいと考えられる。
しかしこの構成(イメージに対して選択度を持たないアンプとミクサーの組み合わせ)には陥りやすい大きな罠がある。 これを防ぐにはDBMへの入力に、イメージ周波数に対して感度を持たないようにするしかない。 すなわちDBMの前にイメージを落とすフィルターを入れることとなる。 またこのフィルターは局発の漏洩に対しても有効になるようにする。 もう一つの方法として、SSB発生によく使われるPSNの技術を使う。逆ヘテロダインと局発の成分を位相でうまく打ち消して処理してしまうのである。 高い周波数から一気に低いIFに落とすレーダー受信機は、高周波増幅とミキサーがイメージ比を期待できないからこの方法を採用している。 SBMを使用する場合はイメージ周波数以外にも、IF周波数に感度を持つのでさらに要注意である。 これらから考えても広帯域受信機は、イメージと局発周波数を受信周波数から離して一元的に処理できる、アップコンバージョンが断然有利となる。 通常言われるスプリアス特性ももちろん有利である。 IF周波数を変えて、ミクサーに強烈な3信号を入れてみたことがある。 この3信号と局発により生成される信号は、その非直線性のために目的IF周波数の周辺に数え切れないスプリアスを生じる。 しかしこの数はIF周波数が高いほど断然有利であった。その量と数はIF周波数に反比例、IFの帯域幅に比例する確率論になってくるのである。 強力な多数の信号を受信する実際の使用環境においてはどうなっているのか、正直言ってぞっとする思いである。 補足(2002年5月4日) |
この話はDBMの項を完全に理解してから読んで欲しい。 視点を変えてフロントエンドの所は無視して、DBMの受信機の構成をもう一度見て欲しい。
そこには第一局部発振回路をフロントエンドにし、SBMのミキサー(局発と信号が同じ所から入る)を持った受信回路の構成が見えてくる。
(局発入力側ポート自身が信号と局発入力になる)。
しかしこの構成はDBM自体に局発入力ポートに対してのアイソレーションがあるために、感度としては相当悪くなる。 ここで前のDBMでの話を思い出して欲しい。広帯域の受信機の局発増幅回路は当然広帯域アンプである。
これをこのままミキサーへ入れてしまうと、今度はこの局発増幅回路の内部雑音のうち、イメージ成分と受信周波数成分、
IF周波数(スルーで通過する)の成分を考えなければならない。結果的にはみかけ上6dBのNFが上がりさらに悪くなる。
しかもフロントエンドにあるのは、位相雑音で悪名高いPLLの発振回路である。 |
S/Nの項やトータルゲインのところでも述べたが、別の面から受信機の感度について考えてみる。 アマチュア用無線機は立派な受信機である。音質を除くと一般に手に入る最高級の受信機であると言っても良いぐらいである。
しかしこのアマチュア無線用の受信機に、数m程度のワイヤーアンテナを接続してもあまりうまく受信できない。ラジオ帯などは最悪である。
ところがトランジスタラジオではロッドアンテナなどで短波帯も非常に感度よく受信できる。
アマチュア無線機のほうがはるかにゲインが高く、 回路構成など性能上すべてにおいて上のはずである。 一般に波長に対して非常に短いアンテナは、低い抵抗成分と高い容量性リアクタンス、さらに接地抵抗などを持つ。
このためインピーダンスとしては非常に高く、これにアマチュア無線機などの受信機入力部を50Ωで設計した受信機が接続されると、
受信電圧は極端に下がってしまう。 受信機での内部雑音電力は帯域幅に比例する。 従って帯域幅が2倍になればNFは変わらなくても感度は3dB悪化する。
例えばCWフィルターを入れると、SSBフィルターに比べて内部雑音が下がるから実質感度が上がる。
しかし信号出力はAGCで一定になるが、無信号時のノイズが下がるため聴感上は音量が下がって聞こえる(感度が下がった様に聞こえる)
実際にもフィルター損失が増えてメーターの振れが落ちるものがあるが、NF的にはほとんど変わっていないはずである。 メーカー機のAMの受信感度の定格を見てほしい。SSB感度に比べると相当低い定格が書かれてある。 実際にはカタログ上16-20dB程度の差を取っているようである。。 しかしこれも前述の専門誌の解説によると、「SSBはゲインのある復調器、AMはゲインのないダイオード検波であるから感度が悪い」などと書かれてある。 SSB検波器にはダイオードなどによるゲインのない物もあるし、ゲインのあるものでも実際はIMの良い動作点に収まるように入力で大きくレベルを下げてある。 すなわちここは各検波器の動作に有利なレベルに合わせる事がなにより大事な事である。さらに誤解している記述があった。 この検波の前にエミッタフォロワーなどの回路をおくことは常套手段である。しかしこれを後から追加してS/Nが良くなってるような記述があった。 これはダイオード検波やAGCの検波回路を直接増幅段に接続すると、インピーダンスを下げてしまいゲインが下がって必要なレベルが得られなかったり、 ダイオードによる負荷の非直線性のために歪みを生じる事、検波器の局発漏洩のためのアイソレーションのためで、電圧ゲイン的には0dBであるし、 何度も言うようであるがここでのゲインの多少は感度にはほとんど影響しない。 余談であるが、ここでトータルゲインやAGCで述べた設定を思い出してほしい。 AGCのかかりはじめはノイズフロアより約30dB程度の上の所であった。SSB 10dB S/Nの感度より16dB高い信号は、ノイズフロアに対しては約26dB高いことになる。 ということはAM30%変調波で感度測定すると、AGCがかかり始める点とほぼ一致してくるということである。この弊害については前にも述べているので省略する。 |
あるDUAL GATE MOS-FETで約20dBのゲインを持つ高周波増幅回路を組み、
その特性を測定してみた。
右図はそのソース抵抗、G1、G2のバイアスを様々に変えてゲインを測定したものの一部である。(バイアスはすべてグランドに対しての電圧) 図でわかるように、G1に約1.8Vを掛けた場合、約2.4V以下でG2電圧に対して直線的にゲインリダクションの特性が得られている。
G2にAGC電圧を掛けた場合、約2.4Vを開始点として約30dB以上の範囲(少し甘めに見れば40dB以上)の間で直線的なリダクションの特性が得られる。
この直線性は非常に重要で、AGCがかかっていれば、そこからのAGC電圧の変化に対するリダクションの特性が一定であるということである。
AGCの抑え込みによる信号波形の過渡応答特性が、どの強さのレベルの信号でも一定になり、
立ち上がり信号のダンピングを一定にして、 最適な定数決定ができるということになる(元信号レベルの動的な変化量にのみ依存する)。 またこの特性より、このMOS-FETによるAGCを3段掛けると100dB程度の直線的なAGCレンジが得られ、 少し直線からはずれるが120dB程度は充分AGCレンジが取れることが解る。同時にSメーターも100dB程度は充分に直線的な目盛りが期待できる。 実際にはAGCを4段に掛け、下の方の少し曲がっている部分を使わず120dB以上の非常にリニアリティーのいいものが得られた。 この時のAGC電圧はG2電圧2.4Vから約1V(-方向)である。 右は上の特性をデータシート上での動作点を表した物である。 右図は順伝達アドミッタンスとVG1s VG2Sの特性である。すなわち上にあればゲインが高い。
B点においても15mS程度であるから負荷インピーダンスを高くすれば充分にゲインを取れるし、A点ではゲインがかなり低くなっていることが解る。
左図で引いた直線は曲線となって現れる。 さらに注目してもらいたいのはA点である。すなわちG2電圧(AGC)でかなりゲインを落としたポイントでのドレイン電流は、
定常状態から比べてもあまり減ってなく、
電流傾斜すなわちゲインのみが大きく減っていることである。入力信号にかなり大きな振幅が有っても、
出力側のドレイン電流曲線はまだかなりの直線性を持っている。
むしろ広いぐらいである。これはAGCが大きく掛かりゲインを落としても、出力が飽和しにくく大入力に耐えうるということである。 AGC(2)で述べた第2ゲートに掛けるAGCが大きく有利なのはこれで理解できると思う。 |
SSB/AM受信機の高周波ゲインを可変するにはいくつかの方法がある。 安価な受信機では操作が複雑になるのを嫌い省略されることも多いが、うまく使えば非常に効果がある。その方法をいくつか見てみよう。 どこかの段または段間のゲインを調節する。またはプリアンプON/OFFなども含めてゲインを変化させる。バイアスを変えて増幅段のゲインを変える。
バイアス点によっては逆に強入力信号特性が悪化する場合がある。 受信機のフロントエンドにアッテネーターを入れる。 一番簡単に行っている例では、フロントエンドをFETの高インピーダンス入力として、10KΩの可変抵抗を信号ラインに入れて強引に絞っている例があった。 広帯域の受信機などではフロントエンドにバンド毎のフィルターがあるからインピーダンスが乱れ、フィルター特性が変化するためにあまり行われない。 ダイオードSWでの切り替えは強入力での歪み発生の懸念があるから、固定アッテネーターは通常はリレーで切り替える。 アッテネーターはπまたはT型が良く知られているがここでよく使われるのは逆L型の素子が1個少ないものである。 逆L型は受信機入力側に対して不整合となるが、出力側すなわちフロントエンドのバンドフィルターに対しては整合条件が変わらないようにする。 アンテナのインピーダンスにより減衰量が変わるという欠点があるが、リレーの一回路で切り替えられるのが利点である。 これらの方法はSメーターの振れ変化が生じるのであるが、フロントエンドで信号強度を強引に下げることにより感度がさがり、 強入力信号特性が大きく改善される効果が期待できる。 AGCのライン電圧を変化させる方法がある。AGCラインに対して外部から電圧をコントロールできるようにし、
信号で生じたAGC電圧とこのコントロール電圧とで強い物勝ちの回路を構成する。
コントロール電圧に応じてSメーターが振れ出すが、設定された電圧よりさらに強い信号に対しては通常通りAGCラインの電圧は変化するから、
Sメーターは増加する。
いわばコントロール電圧によりAGC抑圧の開始する点をSメーター上で決定できる。
スレシホールド型とも言われるようであるが、この方式の利点は強い信号に対してはSメーター値が変化しないこと、
広いレンジを持つAGCラインを利用するのでコントロールの範囲が広い。 |
感度の項で短いアンテナではBC帯の電波がうまく受信できない理由を述べた。 にもかかわらずアマチュア無線機ではさらに20dB程度のアッテネータがBC帯で入るようになっている。 前回にも出てきた専門誌に言わせると1mVの入力で初めて40dBのS/Nがとれるのはまともな設計ではないらしい。 ATTをショートする事を勧めている。他にもショートする改造記事をよく見かける。 しかしハイバンドしか使わないようであればそれでも良いと思うが、ローバンドを使用するのであればこの改造はお勧めしない。 見通し距離をエリヤとするため、近距離に数多くの放送局が存在するBC帯の電波がいかに強力であるか検証してみる。 例として1000kHz、100kW、送信アンテナが0dBi(実際はもっとあるはず)のラジオ局の50kmにおける電界強度と受信電力を計算してみた。
このときの電界強度は約50mV/m、これをλ/2のダイポールで受信すると約+20dBm(0.1W)となる。10kmの至近距離では約+34dBm(2.5W)にもなる。
これより短いアマチュア無線用のアンテナを接続すると実効長が下がり、インピーダンスが上がるために整合の問題から受信電力は下がってしまうが、
ローバンドの大きなアンテナを接続するとmVオーダー以上のレベルが容易に出てくることはおわかりであろう。
こんな大入力がいくつも受信機に入ってくるのである。 ついでであるのでこの条件のλ/2ダイポールにゲルマラジオをつないだ場合、どの程度聞こえるか?
非常にラフな見積もりであることをお断りしておく。 7MHzのダイポールで受信した場合、誘起電圧はおおざっぱに見て 1/7(アンテナ長)に下がる。 アンテナインピー ダンスが高くなるが、高インピーダンスで受けているためにこの分の電圧低下は少ない。 50Ωの固定入力インピーダンスの受信機の場合では、供給側(アンテナインピーダンス)が高くなってしまうと入力電圧が大きく分圧されることになる。 インピーダンスはアンテナの線径や設置条件等で大きく変わるために見積もることは 難しいが、 たとえば1000Ωになるとこの電圧低下分は -26dBとなるから、いかに下がるかがわかるであろう。 |