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ALC トータルゲイン プッシュプルアンプ 広帯域アンプ 2TONE AM 効率 CW
ローカル局が送信する。このローカルは非常に強くてSメーターが9+60dBを軽く振り切れる。 受信機入力はSメーターを信用すれば100mV(100dBuV)以上である。 ところがローカル局が出るとバンド中にザーというノイズが出る。 人はPLLシンセサイザーによるノイズだと言う。本当にそうであろうか? 送信機の最終ミキサーを例えば一般的なIPが+10dBmのDBMで設計したとしよう。
このDBMでのIMDが送信機全体の問題にならないように設計したとすれば、例えばIMDを終段より充分低い40dBに取れば、
ここでの動作レベルは+10dBm - 40dB/2=-10dBmの入力レベルとなる。 これは出力側のレベルで-16dBm程度である。
100Wの送信機であれば、あと+50dBm(100W)まで66dBの増幅度を必要とする。 先の見積もりはかなり適正な動作レベルで、NFも結構いいと仮定しての場合である。
ということはこれより広帯域アンプのゲインが高くなったり、NFが上がるともっとこの雑音レベルが上がるということである。 送信機の雑音を帯域別に分けてみると、上記の広帯域雑音、次がIFの帯域、さらにSSBフィルター内の雑音という様に順番に段階に分かれてくる。 これにPLLの位相雑音がキャリアの近傍に絡んでくるのである。 各帯域の雑音はそれぞれの帯域を制限するフィルターより後のNFと、 ゲインである程度計算する事ができる。 パワーが大きくなると結構ぎりぎりのレベルで動作しているので、送信機の各段のレベル配分、ゲインの管理がいかに重要であるかよくわかる事と思う。 |
一般の100W,HFモービル機は12-14Vで動作する。これに必要な電源電流は約20Aである。
10W機であれば約3A強(最近は機能が多くなり越えるようであるが)で動作する。
よく100W機のパワーを落として、QRPの5Wや10Wで使いたいという声を聴く。
しかしこの使い方は非常に効率が悪い。 パワーを落とした割に消費電流はあまり減らない。この効率について考えてみる。
この例での100W機の消費電流の大半を占めている終段PA回路の設計について考えてみる。
たいていB級またはAB級のプッシュプル回路であるから、片方づつを考えてみる。 さてこの回路で10Wにパワーを落としたときの動作はどうなるか? パワーが変わっても負荷インピーダンスは片方当たり1.5Ωのままである。
ということは10W出力時にここに流れる高周波電流を計算すると約1.8Aになる。 両方で約3.5A、前段とその他の動作電流の1Aを加えると、約5Aである。
実際にはもっと効率が悪いから5-8A程度ではないだろうか。
10Wの専用機では約3A程度で収まるはずが、2から3倍の消費電流となって、非常に効率が悪いのがこれでわかると思う。 効率が悪いのはわかった。この効率の悪い回路で、他に問題はでないのだろうか。 設計されたパワーに対して大きく下げて使う事は、よく言われる「終段を軽く動作させて歪みが少なく動作させる」 などと言うようなものとは全く次元の違う使い方であり、 非常に非効率、不利な使い方なのである。 |
CWモードは一番シンプルな電波形式である。しかしこれも品位の良い電波を出そうとすれば、結構いろんな要素を考えなければならない。 またシンプルなだけに、あらが目立つ物である。 昔のCWはファイナルのカソードを直接キーイングしたりしていたが、今考えるととんでもない方法であったように思う。 キーにかかる電圧が非常に高くなったり、大電流である。危険でもあるし、大電流により接点がすぐ痛む。 また大電流のON/OFFは火花を出し、キーからの火花送信機にもなってしまう。 現在の小電流によるキーイングでも、 特に対策しなければすぐ横の受信機に入ってしまうこともあるから、 今から考えればキークリックなども相当出ていたのではないかと思う。 SSB送信機においてCWを出す方法はいくつかある。
先のAMの様にキャリアを比較的後段から漏らしてやるか、 SSBのバラモジで取っていたバランスを崩してやるかである。
どちらもCW時は音声による変調を切る必要がある。
しかしこれらによる方法だけでは、キーイングOFF時のアイソレーションは充分ではない。 OFF時のアイソレーションはスペースウエーブになり、聞こえてくることになる。
弱い信号ではこの問題はあまり起こらないが、充分にAGC抑圧を受ける強信号では、キーイングの合間のAGCが復帰した時にはっきり聞こえてくる。 CWではセミブレークインやフルブレークインでキーイングに対して自動的に送信になるようにする。 しかしここで問題になるのは受信から送信、あるいは送信から受信への変化時の、受信機/送信機の立ち上がりである。 この切り替え時間が早くなってくると、いままであまり考えられてなかった問題が発生する。いくつか挙げてみよう 送受切り替えリレーなどの動作速度により、あまり早く電波が立ち上がってもリレーが切り替わる間
(外部にリニアアンプなどを接続した場合は、 その切り替わり速度が問題になる。)
送信機にとっては無負荷となり、この間に保護回路が働き、送信時の頭が出なくなってしまう。
またキーイングに対して遅れを大きく取ると、速い速度でのフルブレークインができなくなる。
またきれいなCW波形のためには立ち上がり下がりともに3−数mSecの傾斜が必要であるから、ますます波形がやせたり、フルブレークインが難しくなる。 CWではパワーを制限するALCはAMのような変調によるパワー変化を考える必要はないが、
キーイングによるキャリアの立ち上がりで、SSBと同様にALCが立ち上がる。
(パワー制限のない小電力ではALCはないが、ゲイン変動などによるパワー変化の原因となる) キャリアの断続のみで一見簡単に見えるCWにおいても、品位を良くするためにはレベルの管理や、細かな配慮は必要なのである |
送信機にスプリアスはつきものである。全くスプリアスの輻射がない送信機は存在しない。
送信機のスプリアスにはいろんなもの有るが、今回は目的周波数の整数倍に現れる高調波について書く。
これを落とすには送信機の出力にLPFを入れる。HF機のようにパワーが大きい場合はコイルやCを大型にする必要があるし、
バンド切り替えなどにリレーを使うことも多く、このLPFを受信と共用する事も多い。
しかし一般型のリレーを使用する場合で注意しなければならないことは、当然接点の容量と接点不良である。 LPFはT型、π型があるが一般的にはLが少なくてコスト的にも有利なπ型が用いられる。 段数はスプリアスの抑圧量によるが、50dB程度以上必要で有れば最低5次以上となる。 しかし次数が少ないほど損失には有利である。通過帯域内はできるだけ損失と帯域内SWRを下げる必要がある。 以前から何度も述べてるように、ここで切れの悪いバターワースを用いると、 2倍高調波を落とすためには通過周波数の特性に影響が大きくなるし、 高次のフィルターを必要とする。 損失が少なくなるように帯域内リップルを少なく設計した、チョビシェフやエリピティックフィルターを用いる。 エリピティックは高次高調波で必要な保証減衰量が得られるように設計する。 ここでの損失は、例えば1dBあればパワーロスは約20%に及ぶので影響が非常に大きい。パワーが大きい場合は当然損失分が発熱することになる。 広帯域パワーアンプでの注意点。高いバンドではアンプ自身の周波数特性が高調波に対して落ちているために、比較的落としやすいのであるが、 低いバンドでは高次の高調波はまだアンプの通過周波数帯内にあるために、高調波が比較的大きいことである。 またフィルター自身が実装上の問題、および素子(主にコイル)の問題のために、高周波数において設計した減衰量が得られないことである。 例えばHF広帯域パワーアンプでは1.9MHzや3.5MHzの高次(7次など以上)では思ったより高調波が出てくることがある。 V/UHFの機器や一部のHF機に見られる送受切り替えにダイオードを用いる場合は、ここで高調波が発生する場合がある。 しかしこの後ろにLPFが設けられている場合はあまり大きな問題はでない。しかし整流動作を始めるとパワー損失で高調波どころではなくなる。 パワー検出回路はほとんどがダイオード検波であるから、非直線性の歪みを生じて高調波が発生する。 このために検波回路への結合はできるだけ少なくすることと、効率良い検出である必要がある。 小電力の場合は検出感度を上げるために検出回路への結合が大きくなるから、特に注意が必要である。 この検出回路はフィルターの前、パワーアンプ側に置くと問題ないのであるが、フィルターの帯域特性の影響を受けて、 パワー制御の平坦性がうまくいかなかったり、アンテナ端の実SWRとは異なってしまうためにアンテナに近い所に置く。 測定上の注意。スペアナなどで高調波を観測するが、スペアナも受信機である。入力電力が多いと当然歪んで自身で高調波を出す。
意外と知られてないが特に低い周波数帯では歪みやすく、そのために実際に出している高調波より多く観測される場合がある。
スペアナの定格などで歪みは低い周波数帯を範囲外としている事がある。 |
高調波以外に出てくるスプリアスについて。但し増幅段などの発振で生じるものは除く。 ヘテロダインで周波数を変換する場合、当然考えなければならないのは局発漏洩とイメージ成分である。
IFが低いと、局発周波数とイメージや目的周波数が近くなり、専用にXtalなどの狭帯域フィルターを入れないと除去できない。
またミキサーの動作が厳しくなってくると、目的周波数を得る2次成分以外に、IFや局発の整数倍(整数次の歪み)、
IFの整数倍と局発の整数倍の組み合わせ(2つの整数の和)で生じる3次以上の成分が増加してくる。
これらの組み合わせは和、差それぞれに存在するから(例えば3倍と、2倍の差 5次)、
最終ミキサのように目的周波数に広帯域に変換する場合には除去が難しくなる。 これらからミキサー動作でスプリアス的に有利なのは、高い周波数同士(IFと局発)をミキサーして低い周波数を得る動作である。
この場合低次の歪み成分はほとんどLPFで除去できることになる。例えば70MHzのIFと77MHzの局発から出てくるのは7MHz以外にも
70(IF), 77(局発), 147(イメージ)と、上記で述べた歪み成分の内で、問題になる低次のものはほとんど高周波数になるために除去しやすくなる。
受信機と同じくIF周波数や局発は高い方が有利である。 送信機の実際の動作においては、これらの周波数関係以外に気をつけなければならないことがある。
目的周波数で大きなパワーを出しているために、送信機内部にこのパワーが回り込むためのスプリアスである。 また直接に飛び込むのでなくても、パスコンで述べた基本的なデカップリングの処理をきちんとされてない場合は
回り込みの問題が起きる。
電源ラインとデカップリングのないその複数のパスコン、グランドを通して、低インピーダンスのループを形成する。
このループに高周波パワーなどによりグランドに生じた電位差により電流が流れ、回路への回り込みが生じる。
ユニット間をつなぐ電源や信号線などに、デカップリングの処理をしないで両端をパスコンなどでべたべた落としてループを作ってしまうと、
他の信号やノイズ源によるグランド電位差が両方のパスコンを通じて電流ループを形成する。
線の束などの中で一つでもこういうのがあると、他の多くの線に結合されて影響する。
電源などの線の束を動かしただけで、 スプリアスの抑圧量が大きく変化するなどというのはいい例である。
規模の大きな機器になると、これらのループが何重にも錯綜し、増加したり打ち消したりして不安定になり、手に負えなくなることがある。 |
送信パワーアンプ段はFMなどでは入出力の直線性は問わないから、コイルなどでベースを直流的にグランドと等価にし、0バイアスのC級増幅となる。 SSBや変調のかかったAMに対しては直線性が問われるから、数百mW程度まではA級増幅で、これより多くなると効率の面からB級方向に移行する。 この動作でクロスオーバーの歪みを少なくするために若干のアイドリング電流を流しAB級となる。 トランジスタのバイアスを掛ける方法はいくつか有ることはご存知だと思う。 温度補償の方法にはいくつかあるが、サーミスタやダイオード、バリスタなどの負の温度係数を持ったものを用いるのが一般的である。
しかしもともとサーミスタにはあまり電流を流せない。
これはサーミスタに電流を流すと自己発熱により抵抗値が下がり、さらに発熱し、どんどん温度がかけ離れていくからである。
そのために一般にはダイオードが良く使われる。”ダイオードの変化は同じダイオードで”、である。 電力が大きくなるとベース抵抗も低くなり、電流も多くなるからこの方法が採れない。この場合は定電圧方式をとる。 NPNのトランジスタのベース電圧をダイオードによって作り、このエミッタ出力をバイアスとする。 このNPNのB-E間の電圧降下があるから、定電圧用のベース側のダイオード2個分とする。 この2個のダイオードをそれぞれ高周波TRと定電圧用のTRに熱結合すると温度に対して同期し、電圧が変化してアイドル電流を安定化させることができる。 これらの素子は温度係数がうまく合うものを使うこと。 また熱結合させるためにTRのパッケージやヒートシンク上の近いところに配置し、シリコングリスなどで熱結合させる。 注意するのは素子を離してしまうと熱暴走する可能性である。 また大電力の高周波のすぐ近くであるために、このダイオードに高周波の回り込みを生じ、 これによる検波整流により負電圧が生じ、このためにバイアス電流が減る方向となる。 少ないうちは動作点の移動による音声などの歪みで済むが、大きくなると発振を起こしたり、逆バイアス状態になる。 アンテナの負荷変動によっても回り込みが大きくなる場合がある。 高周波に追随しない遅いダイオードの方が良いのであるが最近は難しくなっている。直列Lや直近のパスコンなどでの回り込み対策が必要となってくる。 FETのパワーアンプでは様子が変わってくる。詳しくは省略するが、アイドリング電流が温度に対して負の特性を持っている場合は熱暴走の危険はないから、 上記のような温度補償とは全く変わってくる。 |
ALC制御やパワーの表示、あるいはSWR保護回路を構成するには出力パワーの検出回路が必要になる。 一つの方法としては電流制限回路を併用する事である。パワーが出過ぎないように終段へ流れる電流を監視して一定以上の電流が流れないように制御する。 検出回路に良くトロイダルコイルが採用される。
測定器などでは20dBカップラとしておなじみであるが、 10ターン巻いたトロイダルコイルの先に50Ωの終端抵抗、または同軸で引っ張り測定器を接続。
このコイルの真ん中に検出する高周波信号を通す。
真ん中に通すことにより1ターンのコイルとして作用するから、巻き数比1:10のトランスを形成する。
信号源からみるとこの1ターンのコイルは0.5Ω(50/10^2=0.5)の抵抗分が負荷に直列に入り、負荷インピーダンスは50.5Ωになる。
そのために50/50.5で約1/100(-20dB)の電力がこのトランスを通じて50Ωまたは測定器に入力される。 この電流検出と上記の電圧検出を組み合わせると進行波電力、反射波電力の検出ができる。 詳しくは書かないが、この両者を回路的に合成し、電圧検出と電流検出の位相と振幅がちょうど合うようにすれば検出電圧は2倍、 逆に打ち消す様にすれば検出電圧は0となる。 これは50Ω整合時の話である。50Ωからずれればそれぞれの振幅が変化して2倍や、0Vではなくなるし、 リアクタンス分が存在すれば電流と電圧の位相は変化するから合成された検出電圧も変化する。倍になる方を進行波、打ち消される方を反射波検出とすればよい。 同軸線路を利用したSWR計等に比べて検出電圧の周波数特性は一定であるから、パワー制御などには都合が良い 本来電力は電圧x電流であり、この方法は電圧+電流のように見えるため、正しい表示をしているようには見えません。 補足(2002年5月4日)
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